2014年8月3日日曜日

戦争の代わりに音楽を(2)

牧師 山口 雅弘

指揮者のバレンボイムはこのように言っている。「我々のプロジェクトは、多分、世界を変えることはできないだろう。しかし、それは前進するための一歩なのだ」。 彼と仲間たちは、未知なる世界に向かって小さな一歩を踏み出した。
実際、このオーケストラには今、前にも増してイスラエルとパレスチナ、さらには周辺のアラブ諸国から若い音楽家たちが招かれ参加していると聞く。スペインのセヴィリヤで一緒に訓練を受け、互いに理解を深め、すばらしい交響楽団に成長していった。

オーケストラの「東西ディヴァン」という名前は、バレンボイムとサイードが語り合い、文豪ゲーテの詩集の名前に因んでつけたそうだ。「ディヴァン」というのはペルシャ語で、ゆったりしたソファーのある客間のことを意味するそうだ。争い合う人々、また立場や考え方が違う人々が、「ディヴァン」でゆったりとくつろぎ、共に語り合い、互いに理解を深め、一緒に生きていこうという祈りが込められているのであろう。オーケストラを「東西ディヴァン」と名付けたのは、その祈りと願いを実現していきたいと思ってのことだろう。

「戦争の代わりに音楽を」というテーマのもとに開かれたコンサートは、人々の心をとらえ、大きな感銘を引き起こしたと聞く。盛大な拍手が鳴り止まなかったそうだ。指揮者のバレンボイムは、「この拍手は自分にではなく、これら若い音楽家たちに送られるべきものだ」と言い、自らも拍手を惜しまなかったと言う。       
コンサートで、鳴り止まなかった拍手は何だったのだろうか? 音楽家も聴衆も考え方や立場の違う者でありながら、「戦争の代わりに音楽を」という祈り、また愛と平和を実現していきたい願う祈りにおいて一つになっての拍手だったのではないだろうか。
現在、イスラエルによるガザ地区への砲撃がやまない。多くの子どもたちや女性たちの悲鳴と断末魔の声が聞こえてくる。今こそ、「戦争の代わりに音楽を」が必要な「時」である。(続く)

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