牧師 山口 雅弘
稚内教会は、北海道の多くの教会と同様に隣の教会が遠い。隣の名寄教会までは170キロ、日本海沿いに180キロ離れて留萌宮園伝道所がある。長く厳しい冬は、猛吹雪と氷との闘いがあり、交通も切断されることがしばしば。教会の牧師は、「気がつくとalone(独り)」と言っていた。孤独と孤立の内に閉ざされて「一人ぽっち」の教会になっているということだろう。
しかし祈りを結集し、孤立に慣れてあきらめが先に立つ教会に光が差してきた。稚内近海の「利尻昆布」を、先ずは近隣、北海教区の諸教会に紹介し買ってもらおうということを始めた。それが「利尻昆布バザー」。「教会もよろコンブ、町もよろコンブ」、「とにかくやってみよう」と始めたそうだ。漁師さんの協力も得られ、「みなさーん!隣人になりましょう。すべての壁を打ち破り、隣人になろう」と言って「昆布バザー」を続けている。
ただし、礼拝は10数名の小さな教会。年金生活者が多く、抗がん剤治療をしている方が5名、そしてみな高齢。にもかかわらず、不安の闇に包まれる中で、無理のない仕方でコンブを仕分けし、袋詰めし、自分たちのできる範囲でしようと作業をしていると言う。作業は、礼拝後に1時間30分ほどに留め、2時間以上になると次の日曜日には朝から気が重くなるので、そうならないようにできる範囲で息長くやろうとしているそうだ。
私はそれを聞いていて、何をするのでも笑顔や笑いが消えて心地悪い疲ればかりが残るようなものであってはならないと思った。稚内教会の方々は少数者であっても、イエスにこのように言われているのではないだろうか。「あなたがたは世の光であり、地の“コンブ”である」と。
今この時も、その小さな教会で礼拝の讃美を挙げる声があり、闇に輝く光として生かされている人々がいることを心に留めたい。このことは本当に神の恵みに他ならない。
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