2014年9月7日日曜日

北の大地からの福音

牧師 山口 雅弘

  北の大地からの福音として、二つのことを伝えたい。夏休みに、私も責任の一端を担う「フェミニスト神学フォーラム in 北海道」に参加した。関西から1人、東京とその近辺から11名の参加があり、北海道を含めると60名近くが集まった。その中にはアイヌ民族、聴覚障がい、ゲイ、レスビアン、両性などの性的少数者の人々がいて、それぞれ様々な差別や苦しみを負いながら参加してくださった。様々な違いをもつ人々と共に聖書の学び合いと色々な課題について話し合い、実に豊かな時を分かち合うことができた。

  キリスト教の歴史においては、差別からの解放と克服に理解を示しその課題に取り組むキリスト者でも、性意識の違いや性志向の異なる性的少数者に対する理解や認識を持てずに、かえって性差別を助長してきた実態がある。異性愛だけが「正常」で、性同一性障がい、同性愛、両性愛などの人々を「聖書」の名によって差別してきた。その人々は、現在も教会に共に連なることができず、居場所を持つこともできない現実が多くある。このことを改めて思わされた。

  ある女性(元男性)がこのように言っていたことが心に残った。「雅弘先生、あっ、ここでは雅弘さんと呼んでいいのよね。私、今とっても嬉しいの。楽しくて仕方がないの。私、“女性”として生きていく決心がついてから少しずつ解放されていく気がするの。”男らしく”でも”女らしく”でもなく、“私らしく”生きていけばいいのですよね…」と。彼女は小さい時から、学校でも社会のあらゆる場でも、また教会においても差別の苦しみを強いられてきた。これからもその苦しみはあるだろう。しかし彼女は、癌を患って余命がどれほどあるかわからないが、とっても生き生きと「今」を生きている。その人との出会いにより、私自身が励まされ、喜びを共にすることができた。北の大地で与えられた、何と大きな「福音(喜びのニュース)」であろうか。

  その意味で、このフォーラムが実に楽しく、時には真剣に、しかも笑いに満ちた会になったことを心から感謝せざるを得ない。

  そこで、稲城教会が今年から掲げる宣教基本方針は現代において実に重要であると改めて心に刻みたい。その一節を確認したい。

  「子どもと大人が、年齢、性別、民族・国籍、障がい・健常などの様々な枠を乗り越え、誰でもが集える楽しい教会を形づくる」。

  このことを絶えず実現していく教会でありたい。(続 く)

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