2016年12月24日土曜日

クリスマスの希望: 人を生かす生命

牧師 山口 雅弘

 「希望」が、どれほど絶望の淵にある人を生かす生命と力になるかを色々なことを通して知らされる。第2次世界大戦の時、東京の平和島という所に大森捕虜収容所があった。1943年(昭和18年)には、その収容所に、アメリカ・イギリス・カナダの捕虜が600人収容されていたと聞く。そこの責任者の軍曹は、絶対的な権力を示し、捕虜たちに身の毛もよだつような暴力を振るっていたそうだ。捕虜たちは、いつ殺されるか分からない恐怖と絶望の淵に立たされていた。日本兵も、そのことを証言している。

 その中の一人で菅原さんという兵隊が、捕虜と言えども人間だという思いで、捕虜の話をそっと聴くようになった。ある時、囚人たちが「クリスマスに礼拝をできないだろうか」と打ち明けたそうだ。菅原さんは、戦時中で、しかも敵国宗教の礼拝を、こともあろうに捕虜収容所の中でするとは不可能だと思った。当然であろう。それでも、知り合いの大森カトリック教会の下山神父に会い、囚人たちに生きる勇気と希望を与えられないだろうかと相談した。教会自体がその時、弾圧されていたので、とんでもない話であった。しかし神父は、一大決心をして、祈りをもって準備を始めたそうだ。

 問題は、軍曹である。軍曹がいては、とても不可能である。このことが知れたら、捕虜たちはもっとひどい拷問に会うだろう。そこで、菅原さんも下山神父も、そして捕虜となった人々も皆、知恵を絞り、工夫し、努力し、必死に祈り、12月24日の日に軍曹が外出するように画策することになる。そして、ついに祈りと努力が実り、24日に静かな礼拝をすることができたという。捕虜の一人一人は、涙を流しながら讃美歌を歌った。そして、祈った。また、「イエスが共にいて下さる」、私たちは生かされているという喜びと、「希望は決して失望に終わることはない」という思いを新たにさせられたと言うのだ。どんなに辛い状況にあっても、クリスマスの希望は、人を生かす生命になることを改めて思いめぐらすクリスマスを迎えている。