2015年2月1日日曜日

大人になれなかった子どもたち(1)

牧師 山口 雅弘

  私たちは、世界の中で見ると、毎日豊かなものに恵まれて生活している。このことを先ず、感謝したい。がしかし、雪国では寒さに凍えながら夜から明け方まで雪の中を歩き通し(寝ると凍え死ぬから)、朝早くやっと地下街や電車のホーム、公共施設の片隅などで暖を取り、水を飲んで飢えをしのぐ「路上生活者」が命をつないで「生きて」いる。

  歴史を見ても、わずか70年ほど前、世界大戦のさなかに、日本のみならずアジア諸国、また世界中の国々の人々、とりわけ子どもたちや女性たちが食うや食わずの大変な状況であった。兵士たちだけでなく、小さく弱い人々が戦火におののき、また飢え渇き、栄養失調や病気によって尊い命が奪われていった。

  現在も、世界の至る所で戦争や災害によって多くの赤ちゃんや子どもたち、また障がいを持つ人々が尊い生命を失っている。美しい音楽を聞き、本を読み、勉強し、友だちと語り、愛し合う人と分かち合う夢や希望の一切が奪われてしまうことほど哀しいことはない。

  戦時国のみならず、現在「イスラム国」の権力者が幼い子どもたちに銃や爆弾を持たせ、戦いに追いやっている現実を知らされると、どれほど小さな行ないであっても、その行為を通して「平和を実現する」生き方の重要性を思わざるを得ない。そして、物質的・経済的な豊かさを感謝しつつ、私たちは自分の生活を見直してみる必要があるだろう。

  一冊の絵本を紹介したい。『おとなになれなかった弟たちに…』という絵本である。作者は、なかなかユニークな俳優で、絵本作家としても知られる米倉斎加年で、昨年8月に80歳で亡くなった人である。

  米倉さんは、自らの経験をもとに、この絵本を書いたと言う。丁度、太平洋戦争の終わり頃、絵本に登場する主人公の「ぼく」は、国民学校(小学校)の4年生。主人公の「ぼく」は、米倉さん自身であった。

  その時は、まさに飢えの時代。子どもたちは皆、お腹を空かして食べるものがなかった。その時代の苦しさを思い出す方も多いと思う。

  そのような中で、弟の「ヒロユキ」が生まれる。けれども、母親はお乳が出ない。これ以上に薄くはならないというほどの雑穀のとぎ汁、やっと配給になった一缶のミルクだけが弟の大切な食べ物だった。
それなのに…。(続く)

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